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水素は、犬のからだにも役立つ?|はじめての方に知ってほしい、水素の働きと研究

犬の健康と水素の研究

「水素が健康にいいと聞くけれど、そもそも何なの?」
「犬にも、何かよい働きがあるの?」

水素水や水素吸入という言葉を耳にしても、何がどうよいのかは、少し分かりにくいですよね。

研究で使われる水素は、水素原子が2つ結びついた小さな分子「H₂」です。この水素を呼吸から取り入れるのが水素吸入。細胞へのダメージを減らす働きが調べられていて、犬の実験でも心筋の損傷が小さくなったという報告など、さまざまな報告がされています。[1・2]

今回は、水素の基本と、犬を対象にした研究を中心にご紹介します。

専門用語はできるだけかみ砕いて説明しますので、初めての方もここから読んでみてください。

目次

まず知っておきたい、水素のこと

水素とは、どんなもの?

水素は、水などを構成する元素の一つです。

健康分野で研究されているのは、主に水素原子が2つ結びついた「水素分子(H₂)」。色やにおいのない気体です。

水素を含むガスを吸うのが「水素吸入」、水に溶けた水素を飲むのが「水素水」です。同じ水素でも、体への取り入れ方が違います。

水素分子と取り入れ方の解説図

吸い込んだ水素は、体のどこに届くのか。そして、細胞にどんな変化が起こるのか。水素吸入の研究では、こうしたことを調べています。

なぜ、からだによい働きが期待されているの?

注目されているのは、酸化ストレスや炎症で傷つく細胞を守れるのではないかという点です。

体内で生まれる活性酸素には、体を守るなどの役割があります。ただ、増えすぎるなどして酸化による負担が大きくなると、細胞を傷つけることもあります。

こうした酸化による負担が大きくなった状態が「酸化ストレス」です。

水素で注目されているのが、そうした酸化ストレスや炎症を抑える働きです。ラットなどの実験では、脳や膵臓、肺の損傷が軽くなったと報告されています。[1・4・5]

こうした水素の働きについては、岡崎ゆうあいクリニックの小林院長にもお話を伺っています。水素が医療の分野で注目される理由を知りたい方は、こちらの記事も読んでみてください。

細胞を守る働きとあわせて、血液の流れも気になるところです。血液には、酸素や栄養を全身に届ける役割があります。水素と血流にはどのような関係があるのでしょうか。株式会社徳様が公開されている下記の動画では、この点が紹介されています。水素の働きを考える参考として是非ご覧ください。

犬にも、よい働きがあるの?

犬を対象に、水素吸入の働きを調べた研究もあります。

2012年に発表された研究では、心臓の血流を一時的に止めて再開させた犬に水素を吸入させたところ、対照群よりも心筋の損傷が小さくなりました。[2]

ほかにも、犬の麻酔中に水素を吸入させた報告があります。水素水を飲ませて皮膚の傷の治り方を調べたり、水素を皮下注射して赤血球のダメージを調べたりした研究でも、改善が報告されています。[6・7・8]

ここから紹介するのは、犬を対象とした4件を含む8件の研究・学会報告です。吸入の研究を中心に、水素水や皮下注射の研究についても、使い方の違いが分かるように記載しています。

1.水素が注目されるきっかけとなった、細胞と脳の研究

細胞を保護し、水素吸入で脳の損傷を抑えた研究

対象:培養細胞・ラット

水素と細胞の酸化ダメージの解説図

2007年、Ohsawaらは、水素の抗酸化作用を調べた研究を『Nature Medicine』に発表しました。

細胞を使った実験では、水素によって、反応性の高い活性酸素「ヒドロキシルラジカル」が減り、細胞へのダメージが抑えられました。実験で調べたほかの善玉活性酸素には同じように反応しなかった点も、注目を集めました。

さらに、脳の血流を一時的に止めて再開させたラットでは、水素ガスの吸入によって脳の損傷が抑えられました。

細胞だけでなく、ラットの脳でも損傷が抑えられたという結果です。[1]

出典[1]
Ohsawa I, et al.(2007)
Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals.
Nature Medicine, 13:688–694.
論文を読む|DOI:10.1038/nm1577

2.犬の実験では、水素吸入で心筋の損傷が小さくなった

水素を吸入した群で、損傷した心筋の割合が小さくなった

対象:ビーグル犬/吸入した水素濃度:1.3%

犬の心筋と水素吸入の解説図

2012年、Yoshidaらは、犬の心臓の血管を90分間ふさいだ後、血流を再開させる実験を行いました。

血液が再び流れれば、それだけで元どおりになると思うかもしれません。ところが、酸素が再び届く際に、組織が傷つくことがあります。「虚血再灌流障害」と呼ばれるこのダメージを、水素吸入で抑えられるかを調べました。

水素吸入群では、血流再開の10分前から再開後1時間まで、水素を含むガスを吸入しました。

血流不足の影響を受ける領域に対する心筋梗塞の割合は、次のとおりでした。

比較した群心筋梗塞の割合
対照群44.0%
水素吸入群20.6%

水素吸入群では、心筋の損傷が有意に小さくなりました(p<0.001)。

この働きには、細胞内でエネルギーをつくる「ミトコンドリア」が関わっているようです。研究では、その仕組みについても調べています。

犬の心筋で、損傷の大きさに差が出たというのは興味深い結果です。ただし、調べたのは血流を止めて再開させたときのダメージで、日常の心臓病予防については分かっていません。[2]

出典[2]
Yoshida A, et al.(2012)
H₂ Mediates Cardioprotection Via Involvements of KATP Channels and Permeability Transition Pores of Mitochondria in Dogs.
Cardiovascular Drugs and Therapy, 26:217–226.
論文を読む|DOI:10.1007/s10557-012-6381-5

3.麻酔中の犬に水素を吸入させると、どうなる?

対象:健常なビーグル犬5頭/方法:水素吸入/学会報告

麻酔中の犬と水素吸入の解説図

宮崎大学の網谷らは、犬の全身麻酔に伴う酸化ストレスに、水素吸入がどう影響するかを調べました。同じ5頭で水素濃度0%・2%・3%の条件を比較し、血液中の酸化ストレスや抗酸化能の指標を測定しています。

2%の条件では、吸入終了時の相対的酸化ストレス度(OSI)が対照より抑えられる傾向がありました。ただし、統計学的な有意差には達していません(p=0.095)。また、この実験中、水素吸入による臨床的な副作用は認められなかったと報告されています。

この5頭の結果だけで「麻酔中の酸化ストレスを抑えられる」とは言い切れません。どんな条件なら違いが出るのか、続く研究が気になるところです。[6]

出典[6]学会講演要旨
網谷龍太、山本集士、金子泰之、鳥巣至道
「イヌの水素ガス吸入による吸入麻酔に伴う酸化ストレスの抑制についての比較検討」
第60回比較統合医療学会学術大会・第20回日本補完代替医療学会学術集会、一般講演25、講演要旨集 p.45。
学会の講演要旨集を読む(PDF)

4.水素水を飲んだ犬で、皮膚の傷の回復を調べる

対象:皮膚に創傷を作製した犬/方法:水素水の飲用

犬の皮膚の回復と水素水の解説図

次は、吸入ではなく水素水の研究です。2021年、Qiらは、犬の皮膚の傷が治るまでの経過を調べ、『Veterinary Sciences』に発表しました。

水素水を飲んだ犬と、蒸留水を飲んだ犬を比較しました。水素水の群では、傷を埋める新しい組織に血管ができやすくなり、傷の表面を皮膚が覆う「上皮化」も進みました。傷が治るまでの時間も短くなったと報告されています。

皮膚が回復する過程で変化が見られた点が興味深いですね。[7]

出典[7]
Qi DD, et al.(2021)
The Therapeutic Effects of Oral Intake of Hydrogen Rich Water on Cutaneous Wound Healing in Dogs.
Veterinary Sciences, 8(11):264.
論文を読む|DOI:10.3390/vetsci8110264

5.犬の赤血球への酸化ダメージを調べた研究

対象:タマネギ中毒モデルのビーグル犬16頭/方法:水素ガスの皮下注射

犬の赤血球へのダメージと水素の解説図

2017年、Zhaoらは、タマネギによる中毒を起こした犬で、水素の作用を調べました。タマネギ中毒では赤血球が酸化ダメージを受け、壊れることで貧血につながります。

水素を投与した群では、対照群と比べて、一部の測定日に貧血や赤血球の変性・溶血、酸化生成物の指標が低く、抗酸化能などの改善が報告されました。一方、腎機能には明らかな差がありませんでした。

赤血球へのダメージが軽くなったという報告ですが、この実験では水素を皮下注射しています。吸入でタマネギ中毒に対処できるという話ではありません。誤食したときは、速やかに動物病院へ相談してください。[8]

出典[8]
Zhao J, et al.(2017)
Therapeutic Effect of Hydrogen Injected Subcutaneously on Onion Poisoned Dogs.
Journal of Veterinary Research, 61(4):527–533.
論文を読む|DOI:10.1515/jvetres-2017-0068

犬の研究を読んでいると、「そもそも、吸った水素はどうやって体で働くの?」という疑問も浮かびます。ここからは、その仕組みを調べたラットやマウスの研究を見ていきます。

6.吸い込んだ水素は、脳や筋肉にも届く

体のさまざまな組織で、水素濃度の上昇を測定

対象:ラット/吸入した水素濃度:3%

吸い込んだ水素の体内分布の解説図

「吸った水素は、肺以外にも届くの?」

この疑問を調べたのが、2019年のYamamotoらの研究です。

水素吸入中のラットで、脳、肝臓、腎臓、腸間膜の脂肪、太ももの筋肉の水素濃度を測定したところ、それぞれで濃度の上昇が確認されました。

水素の濃度や、濃度が上がるまでの時間は、組織によって違いました。

この実験で分かったのは、吸った水素が肺だけでなく、脳や筋肉などにも届くということです。届いた先でどんな効果があるかとは別に、まず体内での動きを確かめた研究です。[3]

出典[3]
Yamamoto R, et al.(2019)
Hydrogen gas distribution in organs after inhalation: Real-time monitoring of tissue hydrogen concentration in rat.
Scientific Reports, 9:1255.
論文を読む|DOI:10.1038/s41598-018-38180-4

7.ラットの膵炎では、炎症と組織の損傷が軽くなった

急性膵炎の実験で、炎症と酸化ストレスが軽減

対象:ラット/吸入した水素濃度:2%

ラットの膵炎と水素吸入の解説図

2016年、Zhouらは、実験的に急性膵炎を起こしたラットに、水素を吸入させて影響を調べました。

膵炎は、膵臓に炎症が起こる病気です。この研究では、水素吸入群で炎症に関わる物質や酸化ストレスの指標が低下し、膵臓の組織の損傷も軽減されました。

血液中のアミラーゼやリパーゼの上昇も抑えられています。

炎症に関わる数値だけでなく、膵臓の組織そのものの損傷も軽くなっていたという結果です。ラットでの実験なので、犬の膵炎でも役立つかは、今後の検証を待つ必要があります。[4]

出典[4]
Zhou HX, et al.(2016)
Protective Effects of Hydrogen Gas on Experimental Acute Pancreatitis.
PLOS ONE, 11:e0154483.
論文を読む|DOI:10.1371/journal.pone.0154483

8.水素は、細胞を守る仕組みにも関わっている?

肺の損傷を抑える働きに、細胞保護の仕組みが関与

対象:ラット・マウス/ラット実験の水素濃度:2%

細胞を守る仕組みとNrf2の解説図

水素を吸うと、なぜ組織のダメージが減るのでしょうか。細胞がもともと持っている、身を守る仕組みとの関係も調べられています。

2013年、Kawamuraらは、高濃度の酸素に長時間さらされることで生じる肺の損傷を調べました。

ラットの実験では、水素を含む高濃度酸素を吸った群で、血液の酸素化が改善し、炎症が抑えられました。また、細胞保護に関わる酵素「HO-1」が増えました。

一方、その調節に関わる「Nrf2」という因子を欠くマウスでは、同じ保護効果が得られませんでした。

Nrf2があるかどうかで結果が変わったことから、水素の働きには、細胞自身が持つ防御の仕組みも関わっていると考えられています。[5]

出典[5]
Kawamura T, et al.(2013)
Hydrogen gas reduces hyperoxic lung injury via the Nrf2 pathway in vivo.
American Journal of Physiology–Lung Cellular and Molecular Physiology, 304:L646–L656.
論文を読む|DOI:10.1152/ajplung.00164.2012

研究から見えてきた、水素吸入の働き

ここまでに紹介した吸入の研究を、働きごとにまとめました。

期待される働き紹介した研究で報告されたこと
酸化によるダメージを軽減する細胞実験とラットの脳の研究で、保護作用が報告された[1]
炎症や組織の損傷を抑える犬の心筋、ラットの膵臓や肺の実験で、損傷の軽減が報告された[2・4・5]
細胞を守る仕組みに関わるミトコンドリアやNrf2に関係する作用が示唆された[2・5]

犬の心筋の損傷が小さくなったり、ラットの膵臓や肺で炎症が軽くなったり。水素吸入の研究では、こうした変化が実際に報告されています。 どの動物に、どんな条件で使った結果なのかを一緒に読むと、水素について分かってきたことが、ぐっと具体的になります。

愛犬にとって、水素はどこまで役立つのか

結論、愛犬にとって、水素はどこまで役に立つのか?

既にご紹介した通り、犬では心筋の損傷を抑えた報告があり、麻酔中の酸化ストレスについても検証されています。吸入以外にも、皮膚の傷や赤血球へのダメージを調べた研究があることをご紹介しました。

犬の体でも水素の働きが調べられ、よい結果が出ている。 愛犬のために水素を知りたい方には、まずこのことを覚えていただければと思います。

ただ、実験で得られた結果が、そのままご家庭での使用時にも当てはまるとは限りません。うちの子に合った使い方は、体調や治療の状況を踏まえ、かかりつけの獣医師と相談しながら考えていきましょう。

愛犬と、できるだけ長く、心地よい毎日を過ごしたい。

そんな思いで水素について調べている方に、この記事が少しでも参考になればうれしいです。気になる研究は、各項目の出典から原文も読めます。

※本記事は、水素吸入を中心に、水素の研究例を紹介するものです。記載した濃度・時間は実験条件であり、家庭での推奨条件ではありません。特定製品の効果を示すものではなく、愛犬への利用、とくに通院・治療中の利用はかかりつけの獣医師にご相談ください。

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